ロング・ロング・グッバイ

おぼえている。

大陸のような背中。

家族でよく食べた喫茶店のトースト。

ソーセージにジャム。

新聞の競馬欄をかかさず読んでいた。

連れていってくれた後楽園の遊園地。

そこでみた特撮ショー。

だいすきだったウルトラマンのフィギュア。

ファミレスでいつも頼んでたオニオンスープ。

バオバブの木のように見えたふともも。

怒ると真っ赤になる顔。

バイオリンを誰よりも褒めてくれたこと。
誰よりもよろこんでくれたこと。

頭を撫でてくれた無骨な手。

はじめてお酒を一緒に飲んだ日のこと。

反対されると思って 言い出せなかった夢を

いちばんに喜んでくれたこと。

少しずつ、痩せていった身体。

かぶっていた青色の帽子。

しわくちゃの笑顔。

みんなが 間違える

僕と弟の 名前を 

お母さんだって 何回も間違えた名前を

一度も呼び間違えたことはなかったこと。


たった それだけのことなのに

それだけのことを

ずっとわすれられずにいる。

1コメント

  • 1000 / 1000

  • いるか

    2020.05.08 22:30

    何気ないささいなことでも、自分にとっては忘れられないことありますよね